これは「偏向報道に不満がある」などとしてNHKとの契約締結(=受信料の支払い)を拒否してきた男性がNHKから裁判を起こされ、最高裁がNHKの主張を認め男性に「契約締結及び受信料の支払い」を命じる判決を下したという話だ。
参考記事はこちら→ https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20171207-00078964/
ここには(本来ならば)2つの論点がある。即ち男性の支払い拒否の理由である「偏向報道」の有無と、「放送法64条に規定された支払い義務」の強制力の有無の2つである。何故ならそもそも「支払い義務発生の根拠こそが偏向報道の回避目的」にあるからで、偏向報道のもとでの支払い義務自体が法の精神にもとる事は明白だからだ。その事は67年前から下記の「放送法の目的」に明記されている。
つまりNHKが「放送の不偏不党、真実及び自律」を実現出来ていない限り、(本来ならば)放送法を盾に受信料を徴収する資格や権利すら発生しないということで、そればかりかその事が「社会の害悪」と見做されれば(国民の総意に基づいて)解体さえ余儀なくされるかも知れない大問題なのである。
一方でNHKが近年「不偏不党」とは言えない根拠は、前会長の「政府が右と言うものを左とは言えない」発言を筆頭に、ニュース番組の内容や国会中継の扱いなど、挙げ連ねれば山ほど有るだろう。
それらの謂わば「政治がらみの放送」の占める割合は(時間的には)全番組の中では僅かかも知れないが、逆に公共放送の役割、存在意義は「政治や社会の動向を(手心を加える事なく)可能な限り正確に伝える」事に尽きると言っても過言では無く、文化や芸術、スポーツやカルチャー、娯楽などは文字通り二の次、三の次で、少なくとも公共放送ならではの役割とは言えない。何故なら、それらは(経済効果は伴っていても)国民の安全安心に直結したものとは言えず、緊急性に乏しいからである。(その証拠にひとたび大規模災害が発生すれば、それらの番組は問答無用で退けられるのが常だろう。)
つまりこの件に関してはNHKは限りなく「黒」に近いのであって、それが解っているからこそNHK側も最高裁側も、それが「男性の支払い拒否の根拠」であるにも関わらず「完全無視」を決め込んでいるとすれば、人として余りにも愚かしく、悲哀を感じずにはいられない。
因みにNHK経営委員会の人事権は国会、最高裁裁判官の人事権は内閣とされているが、安倍一強、与党圧倒的多数のもとではどちらも実質「安倍人事」と言え、そうなるとNHKと最高裁は互いに気心が通じ合っていると思われても仕方がないが、実はそのこと自体が本当は国の根幹を揺るがす大問題と言える。
つまり「司法の独立性」「公共放送の独立性」共に有名無実と化している事を結果が示しているということで、だとすればいよいよ以って残された道筋は「政権交代」しかないだろう。